第41回ボイタ学会(ZOOMによるオンライン形式)

 日時:2026年3月15日(日) 9:00〜
 
スケジュール(予定)
  9:00〜 学会
   症例報告―ボイタ治療前後の客観的評価の試み
           大阪赤十字病院附属大手前整肢学園
                       牟禮 努
                          
10:00〜特別講演
    姿勢と嚥下 ― 発達の連続性から再考する摂食・嚥下機能 ―
             大阪医療大学医療看護学部理学療法学科設置準備室
                               教授 内田 学 先生

 

 11:45〜総会
 12:00終了 

特別講演抄録

姿勢と嚥下発達の連続性から再考する摂食・嚥下機能
大阪医療大学医療看護学部理学療法学科設置準備室
内田 学先生
 
摂食・嚥下機能は、従来、口腔・咽頭といった局所機能として論じられることが多く、その評価や介入も限局的に行われてきた。しかし、小児の発達過程を運動発達学的視点から俯瞰すると、嚥下は決して孤立した機能ではなく、姿勢制御や上肢操作と相互に影響し合いながら成熟していく全身的活動であることが理解される。
乳幼児期の発達では、抗重力伸展活動の獲得を基盤として体幹の安定性が高まり、それに伴い頭頸部の支持性や上肢の支持・操作能力が段階的に発達する。このような身体基盤の成熟は、視線の安定、手の到達・把持、口への運搬動作を可能とし、摂食行動を反射的な段階から、随意性と協調性を備えた活動へと導く。すなわち、体幹・上肢・頭頸部の協調的発達は、嚥下機能の成立を支える不可欠な基盤であり、嚥下は運動発達の連続線上に位置づけられる機能である。臨床においても、座位姿勢の質は嚥下機能と密接に関連している。骨盤・体幹アライメントが不安定な座位では、頭頸部の過剰緊張や代償的運動が生じやすく、口腔期から咽頭期にかけての運動協調を阻害する要因となる。このような状態では、嚥下機能の低下は単なる口腔機能障害としてではなく、姿勢制御の未成熟あるいは破綻として表出している可能性がある。この観点に立てば、嚥下機能は姿勢と同等の重みをもって評価・介入されるべき対象である。嚥下を口腔・顔面の特異的機能として切り離すのではなく、姿勢制御、上肢操作、呼吸との相互関係の中で再定義することが、摂食・嚥下支援に新たな視座をもたらす。
本講演では、発達の連続性という視点から姿勢と嚥下の関係を整理し、姿勢への介入が嚥下機能に及ぼす臨床的意義について考察する。姿勢を整えることは、単に安定した座位を提供することにとどまらず、嚥下という生命活動の質を支える根幹的アプローチであることを再確認したい。
 
Take Home Message
嚥下は「口の機能」ではなく、姿勢制御を基盤とした全身運動であり、発達の文脈の中で捉え直すことが、より本質的な支援につながる。