2023年度第2回ボイタ研究会症例検討会報告
日時:2023年11月25.26日
会場:国立病院機構 南九州病院
講師:草下 香先生
参加者
新村多恵子(医療法人起生会 林内科胃腸科病院)、富樫和美(横浜市北部地域療育センター)
伊集院俊博(OMT伊集院)、池田なぎ美(横浜市西部地域療育センター)
田川久美子(横浜市総合リハビリテーションセンター)、牟禮努(大阪赤十字病院附属大手前整肢学園)
仮屋成美、松元彩乃、有馬由貴(国立病院機構南九州病院)
見学:1名
症例検討会報告
11月25、26日の2日間、鹿児島の国立病院機構南九州病院で症例検討会が行われました。2019年11月に和歌山で行われて以来の対面での症例検討会なので4年ぶりの開催です。
コロナ感染拡大により対面での症例検討会実施が難しく、2021年度からはオンラインの形でなんとか症例検討会を実施し、会員の方々に少しでも日々臨床で行われているボイタ法のお役に立つことができればと事業を行ってきました。対面で行うことができず、苦肉の策として行なってきたオンラインでの症例検討会ですが、アンケート結果をからも分かるように、色々な事情のため参加することが難しかった会員の方々にとっては参加しやすく、また動画による姿勢分析などを繰り返し確認することができるメリットもあって、すごく好評でコロナ感染終息後もオンラインでの検討会継続を希望されている会員も多くおられます。
今回、対面での症例検討会にボイタ研究会役員として参加してきました。コロナ感染は5類になったとはいえ、病院内ではまだまだ感染拡大に対する注意をされているにもかかわらず、従来通り土曜日2症例、日曜日2症例の検討会を行うことができました。また、協力していただいたケースは、筋緊張が低緊張やすごく緊張の強いケース、運動レベルも伝い歩きが可能から自発運動が難しいケースなど4症例全て違った障害レベルの方々で、大変幅広い勉強ができる症例検討会でした。
今回の参加者はベテラン(年寄り)?が多かった・・・もしくは人数があまり多くなかった・・・ どちらの影響か分かりませんが、1症例目から積極的にいろいろな意見が出てきて、良いディスカッションをしながら治療が行えていたように思います。講師の草下先生がすごく参加者から出た考え方を汲み取ってくださり、他の参加者に分かりやすく伝えてくださったことが大変印象的で、自分自身も幅広く子どもを評価分析し、治療につなげることの大切さをすごく勉強できる症例検討会でした。(個人的感想ですが、めちゃめちゃ楽しい症例検討会で、やはり症例検討会は対面で行うことが基本でないといけないと思いました。)
ボイタ研究会の役員として来年度の事業計画を考えていかなければならないのですが、やはりベースは対面での症例検討会を少しでも多く行えるようにしていきたいと考えています。その中で、検討会に参加することが難しい会員の方々に対してどのように日々行われているボイタ法の治療技術向上に少しでもお役に立てる事業の提供を考えていきたいと思います。
症例検討会に参加しての感想からは少し離れてしまいましたが、今回参加して、1番感じたことは、症例検討会はすごく楽しくて、勉強になり、ボイタ研究会が発足してから1番大切にしてきた事業だということが再認識できた検討会でした。準備から当日の色々な手配をしてくださった南九州病院の仮屋先生をはじめスタッフのみなさま、今回体調が万全でない中、講師を引き受けていただき多くを勉強させてくださった草下先生、本当にありがとうございました。
大手前整肢学園 牟禮 努
症例検討会感想
南九州病院 松元彩乃
11月25、26日に実施された症例検討会へ参加しました。育休から4月に復帰したこともあり、個人的に勉強会や症例検討会という研修に参加できたのも、本当に久しぶりでした。今回は少人数でアットホームな雰囲気で行われ、様々な意見が出し合えていたと思います。私自身も反省点や確認できたことが多くあり、有意義な時間を過ごすことができました。
症例も一人出させていただきました。予定していた症例ではなく、急遽来ていただいた症例のため、情報も少ない中ではありましたが、みなさんにみていただくことができました。症例を通して感じたことの一つに、反応を見落としがちで、出発肢位を取ることに一生懸命になっていたということがあります。四つ這い移動での左右差が気になり、その部分をどう捉えれば良いかということを悩んでいた症例でした。症例を担当し、始めのうちは頸椎から胸椎にかけての軸伸展の弱さがあると感じて実施いたにも関わらず、座位姿勢が改善してきたことで左右差が気になり、肩甲帯や脊柱伸展の動きへの意識が減ってしまっていました。また、上半身と下肢のつながりに胸椎が及ぼす影響について気づいていなかったので、問題点のまとめで説明していただいた時に納得することができました。また、実施する中でR-Kでの上肢の位置取りも肩関節が求心位の位置になく、崩れない位置にしてしまっており、反応をみながら調整していかなればいけないことを再確認できました。ボイタ法以外にも、実施後の関わり方で自分が変えたかった部分を自分で崩してしまっていたこともご指摘・ご助言いただき、ご家族への指導に活かしていける部分も学ぶことができました。自分の症例以外にも参加された先生方がされているのを見ていく中で触れたときや姿勢を変えたときにどう変化したのかを、確認してくことの大切さを感じ、私ももっと見て、触れて、確認していかなければと思った2日間でした。また、自分の気づいていない身体の癖が分かり、身体づくりもしていきながら、今回で学んだことを日々の臨床に活かしていきたいと思います。
草下先生はじめ、ご参加くださった先生方、本当にありがとうございました。
症例検討会感想
南九州病院 有馬由貴
数年ぶりに鹿児島の南九州病院で症例検討会を開催させていただきました。この数年は院内外ともに症例を通した勉強会はほとんどできておらず、治療をしながらこれで大丈夫だろうか、自分の手技は合っているのだろうか、どのように改善していこうかなど苦慮しながらの臨床となっていたと思います。今回の症例検討会では、「多くのボイタセラピストに自分の評価、治療について指摘していただく」ことを目的の一つにしていました。客観的に見ていただく機会はこの2日間となるため、疑問を残さないように分からないことは質問することを心がけました。今回は担当症例であったことや、参加者が10名以下というアットホームな環境だったため、流れを止めることになったとは思いますが、疑問や分からないことをすぐに質問し、答えをいただくことで、理解が深まりやすかったです。
具体的に印象に残っていることは、症例ごとの評価・問題点の絞り方(胸椎後弯と腹側筋の関係、股関節の求心位や左右差、摂食・口腔機能との関係など)、自分が行った治療や触り方により、症例がどのように変わったか・変えてしまったか(胸郭の位置、肩・肘の状態など)など。実際の臨床は40分2単位と制限がある中、効率よく治療するためにどのように工夫するか(道具を使用する、どの治療を選択するか)と、ボイタ法だけでなく、その後何につなげていくかなどたくさんのことを学ぶことができました。
数年ぶりの対面での症例検討会、しかも症例が担当だったことで、今回学んだことで、今後臨床場面で多くのことを生かしていくことができると思います。
また感染症も多い中、鹿児島の辺境の地でこのような会を開催・参加してくださった先生方に感謝いたします。
講師からのコメント
草下 香 先生
国立病院機構 南九州病院での症例検討会 感想と解説
今回久しぶりに、従来通りに症例検討会が行えたのは、会場のスタッフである仮屋先生・松元先生・有馬先生のおかげと感謝しております。
4年ぶりの開催という大事な事業に講師として呼んでいただき少々不安を抱えて参加させていただきました。少人数ではありましたが、参加者は超ベテランの先生から若い先生、そして久しぶりにボイタ法を再勉強しようと来てくださった先生で、参加目的は多岐にわたることは想像でき、“非常に難しいっ⁉”と実は感じていました。
そこで、経験豊富な先生方のお知恵をお借りして、若い先生方に解説するスタイルにしようと考えました。 “楽にディスカッション(伊集院先生曰くですが…)” をめざして!
症例担当の先生方からは、具体的に検討したいことが提示されたこと、そしてインストラクターとアシスタントの先生方が率先して評価・治療の工夫を示してくださったことが、豊富なディスカッションが出来た要因と思っています。
松元先生と有馬先生の感想文にありますように、一人だけで治療をしているとどうしても姿勢動作の観察やボイタ治療に偏りや癖が出てしまいます。
例えば、評価では脊柱ばかりに目がいき、姿勢の左右差の現象は捉えられても移動運動や呼吸・摂食機能とのつながりが見えなかったり、脊柱(背側)と胸郭・腹部(腹側)との機能不全の関係を見落とすこととなり、結局問題点がぼやけてしまいます。
またボイタ治療では、出発肢位をとることに一生懸命になり過ぎてかえって出発肢位が崩れてしまうこと、そして症例さんに不快感を与えてしまっていることに気づきにくくなっています。
これはお二人だけの問題ではなく、ボイタセラピスト全員が気を付けていくことと考えます。評価でも治療でも、よく見て、正しく触って確認していくこと、そしてセラピスト自身の姿勢の崩れや癖を治すこと、このことをお二人の先生方に気づいてもらえて嬉しい限りです‼
もう一つ、有馬先生の感想文に“工夫(道具を使用する…)とありますが、これは出発肢位を安全に安定させるためにタオルの利用を紹介しました。主に下記に示すようなことを行いました。①R-Kで後頭側ソケイ部に股関節脱臼予防のためにタオルロールを当てたこと、②R-Kで過敏に筋緊張が出現する際に両下肢にふわりとタオルをかけたこと、③R-UⅠ相で二分脊椎症児の背部が膨隆していて肩甲骨内側に支持が入りにくい際に仙骨部にタオルをはさみ骨盤の後傾を保持したこと。このように症例の症状に合わせてタオルを利用することは治療を効率よく行うために必要かも知れませんね!
また伊集院先生からは、その他のタオルの利用やその考え方、筋緊張の高い症例の評価として関節を動かすだけでなく硬い筋肉を直接触って変化を見る方法等々教えていただきました。(伊集院先生のリュックには何やらグッズがたくさん入っているようでした。)
このボイタ研究会の症例検討会では(ボイタ協会主催のリフレッシャーコースもそうですが)、ボイタコース時には伝えきれなかったことを紹介する良い機会と考えますので、アフターコロナとなり多くの地域で症例検討会が開催されることを願っています。